1. 圧倒的な「彫り」と「摺り」の美しさ
蔦屋吉蔵の最大の良さは、他の版元と一線を画すクオリティの高さにあります。
- 技術へのこだわり: 吉蔵は、歌川国貞(三代豊国)などの人気絵師を起用するだけでなく、彫師や摺師(すりし)にも超一流の職人を配しました。
- 贅沢な色彩: 合巻の表紙や口絵には、当時高価だった「ベロ藍」や鮮やかな色彩をふんだんに使い、金銀や空押し(凹凸をつける技法)などの特殊技法を凝らした「特上版」を多く世に送り出しました。
2. 人気絵師・作家との最強タッグ
「国貞画」「国政画」「柳亭種彦作」といったビッグネームが並んでいます。
- スター作家の起用: 江戸のベストセラー『偐紫田舎源氏』で知られる柳亭種彦など、当時の人気作家を抱えていました。
- 流行の仕掛け人: 読者が「今、何を見たいか」を察知する能力に長けており、常に時代の最先端を行くビジュアルブックをプロデュースしていました。
3. 「江戸の美意識」を明治に繋いだ功績
「明治七甲戌」これは明治維新から数年後のものです。
- 文化の継承: 文明開化によって世の中が激変する中、吉蔵は江戸以来の「合巻」というスタイルを維持し、洗練された江戸の美意識を明治の読者にも届け続けました。
- 資料的価値: 明治初期の目録がついていることで、当時の出版流通や、どのような作品が人気だったのかを知る第一級の歴史資料となっています。
4. コレクションとしての「佇まい」
専用の棚に美しく収められた姿は圧巻です。
- 所有する喜び: 当時の人々にとっても、蔦屋吉蔵の合巻を揃えることは一種のステータスでした。
- 装丁の魅力: 合巻は「表紙をめくる楽しさ」に溢れています。挿絵と文章が一体となったレイアウトは、現代の漫画やグラフィックノベルのルーツとも言える高いデザイン性を誇ります。









寸法
115×175





