1. 「濁手(にごしで)」のあたたかい白
この作品の最大の魅力は、なんといっても「白」の美しさです。
- 柔らかい肌合い: 一般的な磁器の白(青白く冷たい白)とは異なり、十三代が復興させた「濁手」は、米のとぎ汁のような乳白色をしています。
- 質感: 陶石の配合により、硬い磁器でありながら、どこか柔らかく、温かみを感じさせます。この作品では、その濁手の白が「子供の肌の柔らかさ」や「衣の滑らかさ」を完璧に表現しています。
2. 造形の柔らかさと量感
写真からも伝わってくる、ふっくらとした造形美にご注目ください。
- 曲線美: 鋭角な部分がほとんどなく、全体が豊かな曲線で構成されています。膝を立てて座るポーズの安定感と、衣のひだの自然な流れが、見る人に安心感を与えます。
- 肉感: 頬や手足のふっくらとした肉付きは、硬い焼き物であることを忘れさせるほどリアルで、生命感に溢れています。
3. 高貴で慈悲深い「表情」
「菊慈童」は、能の演目や中国の伝説に登場する、菊の露を飲んで不老不死となった仙童(子供の姿をした仙人)です。
- アルカイックスマイル: 十三代のフィギュア(置物)作品は、顔立ちが非常に上品です。ただ可愛いだけでなく、どこか神秘的で、すべてを見透かしているような穏やかな微笑み(アルカイックスマイル)を湛えています。
- 精神性: 幼子のような無垢さと、仙人のような気高さを同時に感じさせる表情は、十三代の精神性の高さを表しています。
4. 「余白」と色彩の対比
柿右衛門様式といえば鮮やかな「赤絵」が有名ですが、この作品はあえて色を抑えています。
- 引き算の美学: 手に持った菊の花(おそらく染付や淡い色絵)だけに色を置き、他をすべて白(濁手)で表現することで、かえって白の美しさが際立っています。
- 静寂: 色彩が少ないことで、作品全体に静寂で清らかな空気が漂っています。
5. 吉祥(縁起の良さ)
モチーフとしての良さもあります。
- 不老長寿: 菊慈童は「不老長寿」や「無病息災」の象徴です。
- 守り神: その穏やかな姿は、飾る場所(床の間や玄関など)を清め、持ち主の健康と長久を願う守り神のような存在感があります。



寸法 販売価格
180×150×200 80,000円





