1. 「形」そのものが文様である（究極の造形美）
井上萬二氏の最大の哲学は「白磁は形がすべて」というものです。 一般的な有田焼（柿右衛門など）は華やかな「絵付け（色）」が特徴ですが、井上氏はあえて色を排除し、誤魔化しのきかない「白一色」で勝負しています。
- 滑らかな曲線: 写真からも見て取れるように、張り詰めたような緊張感がありつつも、ふっくらとした温かみのある曲線が特徴です。これは機械ではなく、氏の卓越した「ろくろ技術」によってのみ生み出されるものです。
- 完璧なバランス: 縁の厚みの均一さや、全体の重心の安定感は、人間国宝ならではの技術の結晶です。
2. 「彫り」による光と影の芸術
この花瓶には「竹」の文様が彫られています（彫文）。 絵筆で描くのではなく、「彫り」によって文様を表現しているのが大きな魅力です。
- 陰影の美しさ: 白一色ですが、竹の彫り込み部分に釉薬（ゆうやく）が溜まったり、光が当たって影ができたりすることで、見る角度や照明によって表情が変わります。
- 竹の精神性: 竹は「成長」「弾力」「強さ」の象徴であり、真っ直ぐで清廉な井上氏の白磁の精神性と非常にマッチした、縁起の良い柄です。
3. 「潤いのある白」の質感
写真の背景（金屏風や黒塗りの台）とのコントラストでよくわかりますが、ただの白ではなく、少し青みを帯びたような、潤い（うるおい）のある白が特徴です。
- 冷たい白ではなく、しっとりとした「温かみ」を感じさせる白磁です。これは厳選された磁器土と、透明感のある釉薬の融合によるものです。
4. 空間を引き締める品格
この花瓶の凄みは、「花を生けなくても、それだけで成立する」点にあります。 もちろん花を生ければ花を引き立てますが、何も入れずに置いておくだけでも、その場の空気を凛と引き締める「オブジェ」としての力を持っています。
寸法 販売価格
280×280×230 100,000円
